PETの未来を変える発想 ― 「全身を一度に見る」Total-Body PETという革命
- 7 日前
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画像診断から、生命活動を観察する技術へ
近年、核医学画像診断の世界で大きな注目を集めている技術があります。
それが Total-Body PET(全身PET) です。
2018年、カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)のSimon R. Cherry先生らは、Journal of Nuclear Medicineに
「Total-Body PET: Maximizing Sensitivity to Create New Opportunities for Clinical Research and Patient Care」という論文を発表しました。
この論文は、現在の全身PET装置「uEXPLORER」につながる基本的な考え方を示した、まさにTotal-Body PETの設計思想を示す重要な報告です。
従来のPETの限界 ― 「見えていない情報」があった
PET(Positron Emission Tomography)は、体内に投与した放射性医薬品から放出される信号を利用して、代謝や分子の動きを画像化する非常に高感度な検査です。
しかし、従来のPET装置には大きな制約がありました。
それは、一度に観察できる範囲が限られている ということです。
通常のPET装置では、体をいくつかの範囲に分けて撮影します。そのため、全身を撮影している間にも、放射性医薬品は血液中を移動し、臓器や病変への取り込みも変化していきます。
つまり、従来のPETでは、「全身で何が同時に起こっているのか」 を完全には捉えることができませんでした。
Total-Body PETという新しい発想
Cherry先生らが提案したTotal-Body PETの考え方は非常にシンプルです。
「検出器を体全体を覆うほど長くすれば、人体から出る信号を最大限利用できるのではないか」 という発想です。
従来のPETでは、一部の体しか検出器の視野に入っていませんでした。
しかし、頭から足までを覆う約2メートルのPET装置を作ることで、放射線信号を効率よく集めることが可能になります。
この結果、全身撮影では従来装置と比較して、約40倍の感度向上が期待されると報告されました。
高感度化が変えるPET検査
感度が大幅に向上すると、PET検査の可能性は大きく広がります。例えば、
① 短時間撮影
これまで数十分必要だった検査を、より短時間で実施できる可能性があります。
② 少ない放射性医薬品量
同じ画質を保ちながら、投与量を減らせる可能性があります。
③ 全身の薬剤動態評価
薬剤が体内を移動する様子を時間経過で観察できます。
つまりPETは、「病変がどこにあるかを見る検査」から、「薬剤が体内でどのように働いているかを見る検査」へ進化する可能性を持っています。
uEXPLORERへ ― 研究から臨床へ
このTotal-Body PETの概念を実際の装置として実現したものが、EXPLORERプロジェクト、そして現在のuEXPLORERです。
2019年には、世界初の全身PET/CT装置によるヒト撮像が報告されました。
194cmの撮像範囲により、成人のほぼ全身を一度の撮影でカバーし、1秒単位の高速な全身薬物動態解析が可能であることが示されました。
セラノスティクスへの広がり
Total-Body PETの技術は、将来的にセラノスティクス医療にも大きな影響を与える可能性があります。
例えばPSMA PETや放射性リガンド治療(RLT)では、
標的分子が全身のどこに存在するか
治療薬がどの程度腫瘍へ集積するか
正常臓器への影響はどの程度か
をより詳細に評価することが重要です。
全身PETは、診断と治療をつなぐセラノスティクスの精度をさらに高める基盤技術になる可能性があります。
未来のPETは「撮影する」から「理解する」へ
Total-Body PETが目指しているものは、単に大きなPET装置を作ることではありません。
それは、人体全体の分子の動きをリアルタイムに理解する新しい医療技術 です。
画像診断、核医学、そしてセラノスティクス。
これらが融合することで、未来の医療は「病気を見つける医療」から、「患者さん一人ひとりの体内環境を理解し、最適な治療を選択する医療」へ進化していくと考えられます。
セラノスティクス横浜では、PSMA PETや放射性リガンド治療だけでなく、未来の個別化医療を支える核医学技術についても最新情報を発信していきます。


