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 前立腺がんは、早期に適切に手術や放射線治療をすれば命にかかわることなく完治を目指すことができます。しかし、残念ながら再発してしまった例や進行した例では、通常、男性ホルモンの分泌を抑えたり働きを抑制するホルモン治療を行います。ホルモン治療を行ったにもかかわらず再発してしまったものを、去勢抵抗性前立腺がんといいます。去勢抵抗性前立腺がんに対しては、近年新しい薬剤が登場して治療の選択肢が増えていますが、それらの薬剤を使用しても再発進行してしまうがんがあります。そうなると、それ以上は進行を食い止める方法がほとんどないのが実情です。

PSMA標的治療
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PSMA治療

去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)とは

 前立腺がんは、早期に適切に手術や放射線治療をすれば、命にかかわることなく完治を目指すことができます。しかし、残念ながら再発してしまった例や進行した例では、通常、男性ホルモンの分泌や働きを抑えるホルモン治療を行います。ホルモン治療を行ったにもかかわらず再発してしまったものを、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)といいます。

 去勢抵抗性前立腺がんに対しては、近年新しい薬が登場して治療の選択肢が増えていますが、それらの薬を使用しても再発・進行してしまうがんがあります。そうなると、それ以上は進行を食い止める方法がほとんどないのが実情です。

PSMAとは

 PSMAは前立腺がんの90%以上で発現している膜タンパクです。がんでは正常前立腺細胞の100~1000倍発現しており、転移がん、進行がんでより強く発現している特徴があります。小腸、唾液腺、涙腺、正常前立腺でも弱く発現しています。名前は似ていますが、PSAとは無関係です。

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ルテチウムPSMA治療(Lu-PSMA治療)

 ルテチウムは原子番号71の元素で元素記号は Lu、原子量は174.967の希土類元素の一つのです。177-ルテチウムはベータ線を発生する放射線元素で、半減期は6.7日です。一方、PSMAは前立腺がん細胞の表面に発現しているタンパク質で、進行がんや転移がんで特に強く出ています。ルテチウムPSMA標的治療は、このPSMAに結合する物質に177-ルテチウムを付けることで、正常臓器にはあまり影響を与えずに前立腺がんを治療することができます。

PSMAペット検査とPSMA治療の仕組みをイラストで表しています

​ルテチウムPSMA​治療の実際

治療前にPSMA PET検査で適応を確認します

ルテチウムPSMA治療は、PSMA(前立腺特異的膜抗原)を発現している前立腺がんを標的とする治療です。そのため、すべての患者さんが治療の対象となるわけではありません。治療を安全かつ効果的に行うため、事前にPSMA PET検査を受け、がん病変に十分なPSMAの発現が認められることを確認します。2025年から、日本国内でもPSMAペット検査が可能となりましたので、まずペット検査を受けて、PSMAの発現を確認してから渡航していただきます。(オーストラリアでPSMA PET検査を受けることも可能です)

治療当日の流れ

治療は外来で行われ、入院の必要はありません。点滴室でルテチウムPSMA製剤を点滴で投与し(お薬の投与は数分で終わります)、前後の準備や医師の診察、経過観察を含めて約3時間で終了します。治療中はリクライニングチェアでゆったりと過ごすことができ、軽食や飲み物のサービスもあります。

治療終了後は医師による最終確認を受けた後、そのまま宿泊先のホテルへ戻ることができます。体調に大きな問題がなければ翌日から通常の生活が可能です。ただし、治療後数日間は放射線防護の観点から、ご家族との接し方やトイレの使用方法などについて、現地スタッフから説明される注意事項を守っていただきます。

ルテチウムPSMA治療についての評価

第II相試験の結果から、Lu PSMA標的治療は高い効果と疼痛緩和効果が認められ、副作用はごくわずかだった。今後、標準治療との比較試験が待たれる。

This LuPSMA Phase II trial provides evidence of high response rates, pain reduction and low toxicity in men with mCRPC who progressed after conventional therapies. These compelling results indicate the need for randomised trials comparing LuPSMA to existing standard-of-care.

M Hofman, J Violet, S Sandhu… - Journal of Nuclear …, 2018 - Soc Nuclear Med



テルビウムPSMA治療(Tb-PSMA治療)

テルビウムは原子番号65の元素で元素記号はTb、原子量は158.93、半減期は6.95日、希土類元素(ランタノイド)の一つです。ルテチウムと同様に、PSMAに結合する物質に161-Tbを付けることで、前立腺がんを治療することができます。テルビウムは主にスイスのCERNおよびPSIを中心に開発・供給されています。

177‐ルテチウムPSMA治療と161-テルビウムPSMA治療について、 オーストラリア・メルボルンにある Peter MacCallum Cancer Centre(通称:Peter Mac)が、次のように説明しています。

[¹⁷⁷Lu]Lu-PSMA 治療は、転移を伴う前立腺がんに対して効果のある治療法ですが、残念ながら時間とともに再び進行してしまうことがあります。

その理由の一つとして、**非常に小さな転移(微小転移)**が挙げられます。これらの小さな病変には、¹⁷⁷Lu が放つ放射線が十分に届かず、治療効果が弱くなることがあります。

¹⁶¹Tb(テルビウム161)は、より短い距離で強く作用する放射線(オージェ電子)を放出する特徴を持っています。このため、1個1個のがん細胞や目に見えないほどの小さな転移にも、効率よく放射線を届けます。​

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​(参考情報はこちらまで)

First-in-human results of terbium-161 [161Tb]Tb-PSMA-I&T dual beta–Auger radioligand therapy in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer (VIOLET): a single-centre, single-arm, phase 1/2 study​​​​

ルテチウム-PSMA治療は既に標準治療の一つとして確立されている一方、テルビウム-PSMA治療は次世代の治療法として有望視されています。オーストラリアではすでに一定数の症例で実施されており、臨床応用が進みつつあります。

  オーストラリアの臨床では、Tb-PSMA治療は主に以下の状況で実施されています:

① 臨床試験(VIOLET trial)
② コンパッショネートユース(個別適応)
③ Lu-PSMAやAc-PSMA療法後のサルベージ治療

*コンパッショネートユース(compassionate use)とは、有効な治療選択肢がない患者に対して、未承認薬や開発中の治療を人道的観点から特別に使用する制度

ICON Cancer Centre(ブリスベン、パース)では、テルビウム(¹⁶¹Tb)PSMA治療も実施しています。治療の流れはルテチウム(¹⁷⁷Lu)PSMA治療とほぼ同じで、PSMA PET検査による適応評価を行った後、外来で点滴治療を受けていただきます。治療後は、そのまま宿泊先のホテルへお戻りいただけます。  

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PSMA PET/CT検査

PSMA PET/CT検査とは

PSMA PET/CT検査は、前立腺がん細胞に多く発現するPSMA(前立腺特異的膜抗原:Prostate-Specific Membrane Antigen)を標的とした画像検査です。微量の放射性薬剤を静脈から投与し、PETとCTを組み合わせて撮影することで、体内の前立腺がんの位置や広がりを高い精度で確認することができます。

従来のCTや骨シンチグラフィでは見つけにくい小さな転移病変も検出できることが多く、再発診断や病期診断に加え、ルテチウム(¹⁷⁷Lu)PSMA治療やテルビウム(¹⁶¹Tb)PSMA治療の適応を判断するために欠かせない検査となっています。

検査は通常、放射性薬剤を静脈注射した後、約60分待機してからPET/CT撮影を行います。撮影時間は20~30分程度で、痛みを伴う処置は注射以外ほとんどありません。

PSMA PET/CT検査では、がん病変に十分なPSMAが発現していることを確認します。PSMA治療はPSMAを標的として薬剤を届ける治療であるため、PSMAの発現が十分でない病変では十分な治療効果が期待できない場合があります。そのため、治療前にはPSMA PET/CT検査による評価が必須となります。

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MRIや骨シンチグラフィにも限界があります。

左のPSMA PET(A)では、頸部から骨盤内まで複数のリンパ節転移が明瞭に描出されています。しかし、中央のMRI(B、D)では、これらの病変は形態変化が小さく、診断が容易ではありません。

また、PSMA PETとMRIを融合した画像(C、E)を見ると、MRIだけでは分かりにくかった病変にPSMAの強い集積が認められ、病変の位置を明確に同定できます。

さらに右の骨シンチグラフィ(F)では、明らかな異常集積は認められませんが、PSMA PETでは骨転移が検出されています。これは、骨シンチが骨の反応(骨形成)を画像化するのに対し、PSMA PETは腫瘍そのもののPSMA発現を直接描出するため、骨反応が起こる前の早期転移も検出できるためです。

このようにPSMA PETは、リンパ節転移だけでなく早期の骨転移も高感度に検出でき、病期診断や治療方針の決定に大きく貢献しています。

PSMA PET/CT検査の応用

1.根治治療後の再発転移の早期部位診断

 例えば、前立腺がんに対して手術や放射線治療をしたあと、PSAが上昇した場合、骨シンチやCTで再発や転移の部位を調べます。しかし、初期の場合は再発転移の部位が小さいために、それらの検査では部位診断ができません。そのため、過剰かもしれない全身治療となるホルモン治療を始めたり、手術部位に広く放射線を照射する治療を選択することが多いのが現状です。せっかく素晴らしい手術で尿漏れもなく男性機能も温存できたのに、これらの治療によって後遺症が残ることがあります。

 もし、再発転移の早期から部位診断ができれば、その部位だけに放射線治療や手術をすることで最低限の侵襲で治療をすることが可能になります。

 PSMA PET/CT検査により、早期の再発転移の部位診断をすることが期待されます。

根治的前立腺全摘除術(RP)や根治的放射線治療後の生化学的再発(BCR)において、PSMA PETの有用性を示した代表的な論文をご紹介します。

1.CONDOR試験(FDA承認の根拠となった試験)CONDOR trial Morris MJ, et al.
Diagnostic Performance of 18F-DCFPyL-PET/CT in Men with Biochemically Recurrent Prostate Cancer (CONDOR). Journal of Clinical Oncology. 2021.

 

主な結果:

  • PSMA PETにより病変を高率に検出

  • 治療方針が約64%の患者で変更

2.システマティックレビュー・メタアナリシス

The impact of PSMA PET on the treatment and outcomes of men with biochemical recurrence of prostate cancer Prostate Cancer and Prostatic Diseases. 2022 34研究・3,680例

主な結果

  • 生化学的再発(BCR)患者の3人に2人以上で再発部位を同定できた

  •  半数以上で治療方針が変更された

  • PETに基づく治療でPSAが改善 PSA低下

  • PSMA PETで病変を同定し、それに基づいて治療すると約60%が約20か月再発なく経過 

2.進行がんに対するPSMA治療の治療前後評価

 近年その劇的な効果に注目を集めているルテチウムPSMA治療ですが、その治療の前後にはPSMA PET/CT検査で治療の評価を行う必要があります。PSMAの発現の有無と強さによって治療の内容の検討がなされます。

3.PSA高値で前立腺癌が疑われる方での生検前の確認

 PSAが高いにもかかわらず、前立腺生検で癌が見つからないケースがあります。このようなときは、まずPSMA PET/CT検査で癌が存在する可能性を探ることに応用できます。また、PSAを定期的に測定して上昇した時に再生検を検討しますが、PSMA PET/CT検査は、再生検が必要かどうかの判断材料を提供します。全身状態や内服薬によっては、前立腺生検が簡単に行えない場合も多々あります。PSMA PET/CT検査は、身体に及ぼす影響が軽微なため、生検前の検査としても有用です。

PRIMARY2試験(2026)

 

PSAが高く、MRIだけでは「がんかどうか」がはっきりしない患者さんでPSMA PETを追加すると、治療が必要な前立腺がんはきちんと見つけながら、必要のない生検を減らせることが報告されています。

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PRIMARY2 の図より

 

A「PSMA PETだけの画像です。赤い矢印の部分に、小さながんがあることを示す強い集まりが見えます。」

B「Aと同じ場所をCT画像と重ねて見ています。PSMA PETで見つかった病変が、前立腺の近くにあることが分かります。」

C「別の角度から見た画像です。PSMA PETによって、小さな病変の位置をより正確に確認できます。」

D「こちらは治療後のPSMA PETです。先ほど見えていた異常な集まりがなくなっています。」

E「CTと重ねた画像でも、治療前に見えていた病変は確認できなくなっています。」

F「別の角度から見ても、異常な集まりは消えており、治療がよく効いたことが分かります。」

このようにPSMA PETは、がんの場所を正確に見つけるだけでなく、治療が効いたかどうかを確認する検査としても役立ちます。  

日本でPSMA PET/CT検査を受けることができるようになりました。

セラノスティクス横浜からご紹介する場合の手順

まず主治医の先生にご相談の上、本サイトの問診欄にご記入ください。主治医の先生からお問い合わせいただくことも可能です。その場合には、「お問い合わせ」のページからご連絡ください。

 

​検査日時の予約はご本人にお願いしています。予約が確定しましたら、情報提供書を検査施設へお送りします。検査後は画像ディスクと報告書が届きますので、主治医の先生へお送りします。

PSMA PET検査は、治療薬のプルヴィクト投与前の診断として保険適用がされています。また自費での検査を実施している医療機関(例として、MIクリニック)もあります。

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Dr. Okada (MI Clinic)

セラノスティクス横浜による国際論文及び学会発表

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参考資料3
参考資料4
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