
テルビウムPSMA治療(Tb-PSMA治療)
テルビウムは原子番号65の元素で元素記号はTb、原子量は158.93、半減期は6.95日、希土類元素(ランタノイド)の一つです。ルテチウムと同様に、PSMAに結合する物質に161-Tbを付けることで、前立腺がんを治療することができます。テルビウムは主にスイスのCERNおよびPSIを中心に開発・供給されています。
177‐ルテチウムPSMA治療と161-テルビウムPSMA治療について、 オーストラリア・メルボルンにある Peter MacCallum Cancer Centre(通称:Peter Mac)が、次のように説明しています。
[¹⁷⁷Lu]Lu-PSMA 治療は、転移を伴う前立腺がんに対して効果のある治療法ですが、残念ながら時間とともに再び進行してしまうことがあります。
その理由の一つとして、非常に小さな転移(微小転移)が挙げられます。これらの小さな病変には、¹⁷⁷Lu が放つ放射線が十分に届かず、治療効果が弱くなることがあります。
¹⁶¹Tb(テルビウム161)は、より短い距離で強く作用する放射線(オージェ電子)を放出する特徴を持っています。このため、1個1個のがん細胞や目に見えないほどの小さな転移にも、効率よく放射線を届けます。

(参考情報はこちらまで)
First-in-human results of terbium-161 [161Tb]Tb-PSMA-I&T dual beta–Auger radioligand therapy in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer (VIOLET): a single-centre, single-arm, phase 1/2 study
VIOLET試験概要VI
オーストラリアのPeter MacCallum Cancer Centreで実施されたテルビウム(Terbium-161)を用いた前立腺がん治療の初の臨床試験(VIOLET試験)で、非常に有望な初期結果が得られたという報告
■ 対象・試験内容
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対象:既存治療が効かなくなった進行前立腺がん患者30名
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試験:第I/II相(first-in-human)
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治療:Terbium-161を用いたPSMA標的放射性リガンド療法
■ 主な結果
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70%の患者でPSAが50%以上低下
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40%の患者でPSAが90%以上低下
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無増悪生存期間(rPFS):中央値11.1ヶ月
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最大耐用量:7.4 GBq
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副作用は少なく、安全性も良好
■ なぜ注目されているのか
テルビウム161は既存のLutetium-177 radioligand therapyと比較して:
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β線(従来と同様)に加え、オージェ電子(超短距離・高密度エネルギー)を放出
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これにより微小転移(ミクロレベル)にも強く、より精密かつ強力に腫瘍を破壊可能
■ 研究者コメント
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「初のヒト試験として非常に勇気づけられる結果」
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新たな有力治療オプションになる可能性
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今後は第III相試験での検証が必要
■ まとめ
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Lu-177に続く次世代核種の有力候補であるテルビウム161が臨床で具体的なデータを示し始めた
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特に、微小病変への有効性、良好な安全性プロファイルがポイント
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将来的な治療選択肢の拡張に繋がる可能性が示唆されている
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Lu-177治療を補完・進化させる可能性のある核医学治療が、現実味を帯びてきた
ルテチウム-PSMA治療は既に標準治療の一つとして確立されている一方、テルビウム-PSMA治療は次世代の治療法として有望視されています。オーストラリアではすでに一定数の症例で実施されており、臨床応用が進みつつあります。
オーストラリアの臨床では、Tb-PSMA治療は主に以下の状況で実施されています:
① 臨床試験(VIOLET trial)
② コンパッショネートユース(個別適応)
③ Lu-PSMAやAc-PSMA療法後のサルベージ治療
*コンパッショネートユース(compassionate use)とは、有効な治療選択肢がない患者に対して、未承認薬や開発中の治療を人道的観点から特別に使用する制度


がん細胞の大きさは約10-20μm。
アルファ線の飛程距離は細胞レベルです。

DNAの大きさは直径約2nm。
オージェ電子の飛程距離はDNAレベルです。
¹⁶¹Tb(テルビウム161)治療についてのご相談は、お気軽にお問い合わせフォームからどうぞ。