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ウィーンから届く新たな報告に期待—VIOLET試験の最新結果
ウィーンから届く新たな報告に期待—VIOLET試験の最新結果 10月17日から21日まで、オーストリアのウィーンで、欧州核医学会(EANM 2026)が開催されます。核医学、分子イメージング、セラノスティクスの最新の研究成果が世界中から集まる、注目の学会です。 今回、我々が特に楽しみにしているのが、テルビウム161(Tb-161)を用いたPSMA標的放射性リガンド療法の「VIOLET試験」の最新報告です。 Tb-161はLu-177の先に何をもたらすのか 現在、前立腺がんの放射性リガンド療法(RLT)では、ルテチウム177(Lu-177)を用いた治療が広がっています。一方、治療を続けても再び病勢が進行する患者さんがいることも、私たちが向き合わなければならない課題です。 そこで期待されているのが、テルビウム161(Tb-161)です。 Tb-161は、Lu-177と同様のβ線に加えて、飛程が非常に短いオージェ電子や転換電子を放出します。こうした電子は、微小転移や少数の腫瘍細胞に、より局所的に放射線エネルギーを届けられる可能性があります。...


乳がんにも広がるセラノスティクス―Tb-161とFAPを標的とした新しい放射性リガンド治療
乳がんにも広がるセラノスティクス―Tb-161とFAPを標的とした新しい放射性リガンド治療 放射性医薬品を使って「診断」と「治療」を一体化するセラノスティクス(Theranostics)は、前立腺がんを中心に大きく発展してきました。 PSMA PETで腫瘍を確認し、PSMAを標的とする放射性リガンド治療(RLT)につなげる。 この考え方は、現在では前立腺がんだけでなく、さまざまながんへと広がりつつあります。 その一つが乳がんです。 今回、乳がんのセラノスティクスに関連して興味深い研究が報告されました。 「A 68Ga/161Tb-labeled FAP-targeted radioligand for enhanced theranostics: Prolonged tumor retention and metastasis inhibition」 という研究です。 FAPを標的にするという新しい考え方 この研究で注目されているのが、FAP(fibroblast activation protein)です。FAPは、がん細胞そのものというより、


PSAの「数字」だけでなく「変化」を見る―AIを使った前立腺がん予後予測の新しい研究
PSAの「数字」だけでなく「変化」を見る――AIを使った前立腺がん予後予測の新しい研究 前立腺がんの治療では、血液検査で測定するPSA(前立腺特異抗原)が、治療の経過を見るための重要な指標の一つです。 PSAが下がっていれば治療が効いている可能性があり、反対に上昇してくれば、病気の進行を疑うきっかけになります。 しかし、PSAは「ある時点の数字」だけを見ればよいわけではありません。 どのくらいの速さで下がったのか、いったん下がった後にどう変化したのか、再び上昇してきたのか―。 こうしたPSAの時間的な変化(PSA trajectory)にも、患者さんの病気の状態や、その後の経過に関する情報が含まれている可能性があります。 PSAの「軌跡」をAIに学習させる 2026年に発表された研究では、転移性前立腺がんの患者さんを対象に、長期間にわたって測定されたPSAの変化をAIに学習させ、患者さんの生存期間を予測するモデルが検討されました。 研究では、ニューヨークのMemorial Sloan Kettering Cancer Center(MSK)の患者


2026年の放射性リガンド療法(RLT)とPSMA PET
「診断のための画像」から「治療を最適化する画像」へ 前立腺がんの治療において、PSMA PETを使った画像診断と、PSMAを標的とする放射性リガンド治療は、急速に進歩しています。 2026年のAUA (米国泌尿器科学会)年次総会 で、米国ニューヨーク州で放射線腫瘍医として診療する Steven Finkelstein先生から「Radioligand Therapy in 2026 and the Role of PSMA PET Imaging」という講演がありました。 この講演で特に印象的だったのは、PSMA PETの役割が「治療を始めるための検査」だけではなくなってきているということです。 PSMA PETは「治療の入口」だけではない これまでPSMA PETは、主に 前立腺がんの転移を調べる 再発した場所を確認する PSMAを発現している腫瘍かどうかを確認する 放射性リガンド療法の適応を判断する といった目的で利用されてきました。しかし、これからはそれだけではありません。 PSMA PET → 放射性リガンド療法 → PSMA PET...


がん治療後の「物忘れ」や「頭がぼんやりする」はなぜ起こる?
― がん関連認知機能障害(CRCI)について 「最近、物忘れが増えた」「集中できない」「頭がぼんやりして、以前のように考えられない」がんの治療を受けた患者さんから、このような訴えが聞かれることがあります。 これまで「ケモブレイン(chemo brain)」や「ケモフォグ(chemo fog)」と呼ばれてきた症状ですが、現在では、がん関連認知機能障害(Cancer-Related Cognitive Impairment:CRCI)という、より広い概念で捉えられています。 2026年にASCO Educational Bookに掲載された総説では、CRCIの評価と管理について、最新の知見がまとめられています。(ASCO Publications) 「抗がん剤のせい」だけではありません CRCIは、抗がん剤だけが原因で起こるわけではありません。 がんそのものや、化学療法、ホルモン療法、放射線治療などの治療に加えて、 疲労や貧血 痛み 不安や抑うつ 睡眠障害 他の病気や加齢 運動不足や生活習慣 など、さまざまな要因が重なって生じると考えられています。(


PSMA治療は「効いているか」をもっと早く知ることができる?
― 血液中の「がんのDNA」に注目した新しい研究 DYNAMO Trial ― PSMAを標的にした放射性リガンド治療では、治療前にPSMA PETを行い、がん細胞にPSMAが十分に存在するかを確認します。 では、治療を始めた後はどうでしょう。 「この治療は、本当にこの患者さんのがんに効いているのだろう?」 現在は、PSA値や画像検査などを組み合わせて治療効果を判断します。しかし、はっきりとした変化が分かるまでには、ある程度の時間がかかります。 そこで、最近注目されているのがctDNA(血中循環腫瘍DNA)です。 血液から「がんの変化」を見る がん細胞が壊れると、そのDNAの一部が血液中に流れ出します。このDNAを調べることで、画像検査ではまだ分からないような小さな変化を、血液から捉えられる可能性があります。 つまり、PSMA PETは「治療の標的となるがんがあるか」を見る検査。 一方で、ctDNAは「治療によって、がんが実際に減っているか」を見る手がかりという考え方です。 「DYNAMO Trial」という新しい試み この考え方をPSMA治療に


進行前立腺がん治療は、いま大きく変わろうとしています
「薬を順番に使う」から「患者さんに合わせて治療を組合わせる」時代へ 進行前立腺がんの治療は、ここ数年で大きく進歩しています。 2026年に 医学雑誌「BMJ(英国医師会雑誌)」に掲載されたレビュー「Advances in systemic therapies for advanced prostate cancer」では、進行前立腺がんに対する最新の全身療法を幅広く整理し、現在の治療がどのように変化しているのかが紹介されています。 ADT(アンドロゲン除去療法)だけの時代から、治療を組合わせる時代へ 以前、転移性前立腺がんの治療では、男性ホルモンを抑えるADT(アンドロゲン除去療法)が治療の中心でした。 しかし現在では、ADTだけで治療するのではなく、 ADT+ARPI(アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミドなど) ADT+化学療法 ADT+ARPI+化学療法 など、複数の治療を組み合わせる方法が広がっています。 特に転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)では、患者さんの病気の広がりや状態に応じて、できるだけ早い段階から治


PETの未来を変える発想 ― 「全身を一度に見る」Total-Body PETという革命
画像診断から、生命活動を観察する技術へ 近年、核医学画像診断の世界で大きな注目を集めている技術があります。 それが Total-Body PET(全身PET) です。 2018年、カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)のSimon R. Cherry先生らは、Journal of Nuclear Medicineに 「Total-Body PET: Maximizing Sensitivity to Create New Opportunities for Clinical Research and Patient Care」という論文を発表しました。 この論文は、現在の全身PET装置「uEXPLORER」につながる基本的な考え方を示した、まさにTotal-Body PETの設計思想を示す重要な報告です。 従来のPETの限界 ― 「見えていない情報」があった PET(Positron Emission Tomography)は、体内に投与した放射性医薬品から放出される信号を利用して、代謝や分子の動きを画像化する非常に高感度な検査です。.


PSMA-RLTは次の時代へ ― OPTIMAL-e試験が目指す「個別化治療」
PSMA標的放射性リガンド療法(PSMA-RLT)は、これまで主に転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象に発展してきました。 しかし現在、より早い病期での治療効果を検証する新たな臨床試験が始まっています。 その代表が、オーストラリアのSt Vincent's Hospital Sydneyで開始されたOPTIMAL-e試験です。 より早期の前立腺がんが対象 OPTIMAL-e試験では、転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)の患者さんを対象に、標準治療である アンドロゲン除去療法(ADT) アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI) に加えて、TLX597-Txを併用します。 TLX597-Txは、Lu-177で標識した次世代PSMA低分子リガンドです。これまでの研究では、唾液腺や腎臓への放射線被ばくを抑えながら、PSMA陽性腫瘍への高い集積が期待されており、より早期の患者さんへの応用が検討されています。 最大の特徴は「Adaptive dosing」 OPTIMAL-e試験の最大の特徴は、Adaptive dosing(適応的投与)と


ASCO GU 2026:PYLARIFY® Registryが示したPSMA PETの臨床的インパクト
2026年ASCO GUでは、PSMA PET診断薬PYLARIFY®(18F-piflufolastat)のリアルワールドデータが発表されました。 今回報告されたPYLARIFY Registryでは、実際の臨床現場でPSMA PETが前立腺がん診療にどのような影響を与えているかが評価されました。(ASC Publications) 診断だけでなく治療方針にも影響 Registryの解析では、PYLARIFYによるPSMA PET検査によって、 病変の広がりをより正確に把握できる 治療方針の変更につながる症例が少なくない 医師の診断や治療選択に対する確信度が高まる ことが示されました。(ASC Publications) PSMA PETは「次の一手」を決める検査へ PSMA PETは単に病変を見つける検査ではありません。 検査結果をもとに、 局所治療を行うのか 全身治療へ切り替えるのか PSMA標的放射性リガンド療法(Lu-177やTb-161)の候補となるのか といった重要な治療方針の決定に大きく貢献します。 日本への期待...


「同じ量を全員に投与」で本当に十分?放射性リガンド療法の個別化を考える
近年、前立腺がんに対するPSMA放射性リガンド療法をはじめ、さまざまながんで放射性医薬品治療(Radiopharmaceutical Therapy:RPT)が広がっています。 そんな中、興味深いタイトルの論文が発表されました。 「Are Radiopharmaceutical Therapy Trials Designed to Undertreat?(放射性医薬品治療の臨床試験は、患者を十分に治療していないように設計されているのではないか?)」 この論文は、現在の臨床試験で一般的な「全員に同じ投与量・同じ回数で治療する方法」に疑問を投げかけています。 現在の治療は「画一的」 多くの臨床試験では、 決められた投与量(例:7.4 GBq) 決められた投与回数(例:6回) 決められた治療間隔(例:6週間ごと) というように、すべての患者が同じスケジュールで治療を受けます。 これは試験結果を比較しやすくするためには重要ですが、実際の患者さんは一人ひとり異なります。 「Undertreat(治療不足)」とは? 論文でいう「Undertreat」とは、患


AIで診察内容をもっと分かりやすく ― NLPとChatGPTの可能性
前立腺がん診療において、患者さんは診察で説明された内容の多くを忘れてしまうことがあるといわれています。 そのため、診察内容を分かりやすくまとめて振り返ることは、治療への理解を深めるうえでとても重要です。 最近発表された研究では、診察内容をそのままChatGPTで要約するよりも、NLP(自然言語処理)という技術を使って重要な情報を抽出してからChatGPTで要約した方が、より正確で分かりやすい内容になることが示されました。 セラノスティクス横浜では、患者さんとオーストラリアの専門医とのオンライン診察に、日本語通訳とバイリンガルスタッフが同席しています。診察後には、患者さんが安心して治療を受けられるよう、診察内容を日本語で分かりやすくまとめてお届けしています。 AI技術は日々進歩していますが、患者さんに本当に役立つ情報を届けるためには、人による丁寧なサポートとの組み合わせが欠かせません。今後はNLPやChatGPTなどのAI技術も積極的に活用しながら、より分かりやすく、より安心できる医療サポートを提供していきたいと考えています。


トルコ、前立腺がんに対するAc-225 PSMA治療を保険償還対象へ
トルコは2026年、Actinium-225(Ac-225)PSMA放射性リガンド療法を公的医療保険(SGK)の償還対象としました。これにより、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対する標的アルファ線治療(Targeted Alpha Therapy:TAT)へのアクセスが大きく改善されます。 1. Ac-225 PSMA治療が正式に保険適用 トルコの医療実施規則(SUT)へ組み込まれ、公的医療機関で実施されるAc-225 PSMA治療が償還対象となりました。 これにより、高額な治療費が障壁となっていた患者でも治療を受けやすくなります。 2. 対象患者 保険適用となるのは以下の条件を満たす患者です。 転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC) 標準治療(タキサン系化学療法、ARPIなど)終了後 Lu-177 PSMA治療を少なくとも2サイクル受けても病勢進行、または4サイクル実施しても十分な効果が得られない患者 Ga-68 PSMA PET/CTでPSMA陽性病変を確認 核医学・腫瘍内科を含む多職種カンファレンスで適応判断...
世界のセラノスティクス
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