2019/11/24 患者会講演(MoFesta 2019)の様子です。★音声が出ますのでご注意ください。
*モーフェスタ講演後、コロナ禍の影響で現在は治療内容などに変更があります。
*セラノスティクス横浜のスタッフは平日昼間は一般外来業務を行っております。電話でのお問い合わせはご遠慮ください。

​リーフレット

PSMA PET検査のリーフレットです。
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PSMA治療のリーフレット(2018年12月作成、現在実施している内容と少し異なります)。
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専門医のコメント

前立腺がんに対する新しい標的分子PSMA

 前立腺特異膜抗原(PSMA: Prostate Specific Membrane Antigen)は、前立腺細胞の表面に存在するタンパク質です。正常の前立腺細胞に存在していますが、前立腺がんになると、その数が増えます。特に、がんの悪性度が高かったり、転移や再発をした前立腺がん細胞の表面のPSMAは正常前立腺細胞の数10~100倍もの量が出現していることが知られています。この性質を利用して、前立腺がんの早期の転移部位診断や進行がん治療への応用が世界で始まっています。

 

1.再発転移の早期診断への応用:PSMA PET/CTスキャン

 前立腺がんの手術をすると、腫瘍マーカーはほぼ0になります。放射線治療でもPSAは1以下にまで減少します。このような根治的な治療の後の再発転移は、まずPSAの上昇によって推測されます。ところが、PSAが少し上昇した程度では、どこに再発や転移を生じているのかはわかりません。ある程度、再発や転移が大きくならないと、骨のスキャンやCT検査では見つからないのです。そのため、再発早期には前立腺のあった場所を中心に広く放射線を当て、さらにホルモン治療を数年間行うことが多いです。それにより、せっかく神経温存手術や小線源治療などで体に影響の少ない治療法を選んだのに、再発したとたん副作用の多い治療を行うことになります。もし、再発や転移のごく早期にその部位がわかれば、そこをピンポイントで治療することによって無駄な追加治療を行うことが回避できます。

 PSMAは再発や転移を起こした少量の前立腺がん細胞でも強く発現しています。そのため、このPSMAを認識する物質を用いてPET検査を行うと、ごく早期のがん転移も発見することができます。これが、PSMA PET/CTスキャンです。このPSMA PET/CTを用いれば、早期のPSA再発例(PSA 0.2 ng/mL以上)の79.5%で転移部位が確認できたと報告されています。同様の報告はいくつかされていて、今後は治療後の再発転移の部位確定の有用な方法になると思われます。

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2.PSMA標的放射線治療

再発や転移をした進行性の前立腺がんは非常に治療に抵抗性で、有効な治療法がないのが現状です。多くは、ホルモン治療が行いますが、効果は限定的で数年で再発を来します。この状態を去勢抵抗性前立腺がんと呼び、抗がん剤や高価な新薬を用いてもなかなか制御できません。さらに、骨に転移すると、非常に強い痛みが生じて生活の質を著しく低下させます。

 このような進行性のがんに対しては、がん細胞のみを攻撃する分子標的治療が注目されています。これは、がん細胞の表面に存在している分子を標的にしてがん細胞だけを狙い撃ちにする治療法で、正常の臓器には影響が少ないのが特徴です。前立腺がん細胞の表面に存在するPSMAを標的にして、PSMAに特異的に結合する物質に放射性物質を組み合わせれば、PSMAが存在する細胞だけに放射線を浴びせることができます。分子標的治療は抗がん剤や抗体を組み合わせる方法が多いのですが、放射線物質を組み合わせることでより強力に癌細胞のみをたたくことが可能となります。この治療がPSMA標的放射線治療(ここではPSMA治療と略します)です。

 進行性の去勢抵抗性前立腺癌に対するPSMA治療は、2015年にドイツのハイデルベルグ大学で始まりました。まず、ルテチウム177という放射線物質を用いた治療から始まり、2017年に145人の患者さんに実施した結果が報告されました。すべての患者さんが他の治療をほぼすべてやりつくした状態の進行性前立腺がんであったにもかかわらず、実に45%以上の患者さんはPSAが50%以上低下し、33~70%の患者さんは痛みが軽減し、60%の患者さんは生活の質が上がり、74%の患者さんは日常生活の活動性が向上しました。副作用はほとんど見られませんでした。これは、去勢抵抗性前立腺癌に対する従来の治療と比較して驚くべき効果で、さらに安全性が極めて高いため、次世代の治療としてたいへん注目を集めています。最近では、さらに強力なアクチニウム225という放射線物質を用いた治療も始まっています。

 PSMA治療はまだ始まったばかりですが、その有効性と安全性の高さから徐々に実施施設が広がっているところです。臨床データは、権威のある国際学会や雑誌に毎年のように発表され、いずれも高い臨床効果が実証されています。このように、本治療は科学的に見てもたいへん有望な治療法であることは間違いありません。しかし、残念ながら、現在本治療を行っているのはドイツとオーストラリアに限られており、いつ日本で治療が受けられるようになるかは全く不明です。

 今回、本治療がオーストラリアで受けられる道が開かれたことは、すでに治療をし尽くした進行性前立腺がんの患者さんにとっては福音となると思われます。少しでも多くの患者さんが前立腺がんの苦しみから解放されることを願ってやみません。

 

2018年9月24日

馬車道さくらクリニック

院長  車 英俊

​学会発表などの資料

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